ピアノを続けている方の中には、親指のつけ根が痛い、手がもたない、練習するとすぐつらくなる、という悩みを抱えている方が少なくありません。
特に親指のつけ根に負担がかかるCM関節障害は、演奏を続けたい方にとって深刻な問題です。指の変形として知られるへバーデン結節を併せている方もいます。こうした症状があると、つい「手そのものが悪い」と考えがちですが、実際には手だけを見ていても改善ないことがあります。負担の原因は、手ではなく腕や肩、さらに体幹にあることも少なくありません。
親指の痛みは、手の使いすぎだけで起きるとは限りません
ピアノは指先で弾くものに見えますが、実際には手だけを使って弾いているわけではありません。
前腕、肘、肩、肩甲骨まわり、そして体幹で支えながら、ようやく指先の細かい動きが成り立ちます。
指先までの流れが崩れると、一番弱いところに負担が集中しやすくなります。
親指のCM関節は、つまむ、支える、開くといった動作で日常でも使われる関節です。そこに長時間の練習、反復動作、無理なフォーム修正、押し込みの強い弾き方が重なると、どうしても負担が蓄積します。手に症状が出ていても、必ずしも問題が手だけにあるとは限りません。
手を壊しやすい方で意外と多いのが、肩や肩甲骨まわりの硬さです。肩甲骨は肩全体の土台です。ここが硬くなると、腕全体のしなやかさが落ち、負担を分散する力が弱くなります。
本来であれば、肩や背中、体幹まで使って受け流せるはずの負担を、前腕や手首、親指が代わりに受ける状態になります。すると、見た目には「手を使いすぎている」ように見えても、実際には腕や肩がうまく働いていないことになります。
へバーデン結節や加齢だけでは片づけられないこともあります
ピアノを弾く方の中には、へバーデン結節や関節の変形を指摘されている方もいます。もちろん年齢による変化を無視することはできません。
ただ、それだけで完結してしまうと、改善できるチャンスまで逃してしまいます。
加齢で回復力が落ちるのは確かですが、フォームの崩れによる負担の増加はまったく別の問題です。関節に変化があっても、身体が整うことで楽になる方もいます。前腕の緊張が抜ける、肩が使える、体幹で支えられるようになる。それだけで手にかかるストレスは改善します。
「年だから仕方ない」という言葉で納得する前に、身体全体の使い方を見直す価値は十分にあります。
本当に見るべきなのは、痛みのある部位ではないかも
痛みが出ると、人はそこを無意識にかばいます。親指を守ろうとして力が入る、手首が固まる、前腕が張る、肩が上がる、肘が動かなくなる、といった反応が起こります。 こうなると、ますます腕全体で負担を逃がせなくなり、また親指にかかる負担が増大する一方になってしまいます。
CM関節障害や手の痛みがあるとき、もちろん親指や手首の状態を確認することは大切です。
ただ、それだけでは不十分なことがあります。前腕が必要以上に緊張していないか。肘の抜けが悪くなっていないか。肩甲骨が動かず、肩で腕を吊っていないか。背中や肋骨まわりが硬くなっていないか。体幹が不安定で、腕だけで支えていないか。
実際に見てみると、、「痛い場所」と「負担の原因」が別にあることは珍しくありません。手に痛みがあるからといって、手だけが原因とは限らないのです。
手の痛みでお悩みの方へ
親指の痛みや手の不調は、痛い場所だけを治療しても改善しないことがあります。
当院では、手首や指だけでなく、前腕、肩、肩甲帯、体幹まで含めて全体を確認し、どこに負担が集まっているのかを考えて施術を行っています。
ピアノを続けたいのに手が痛い、休んでも戻る、手だけ治療しても改善しないという方は、一度全体のバランスから見直してみてはいかがでしょうか。

